『一〇五度』あらすじと読書感想文の例文2作品と書き方ポイント

こちらでは、2018年の「第64回 青少年読書感想文全国コンクール」)中学校の部の課題図書
『一〇五度』の「あらすじ」と書き方のポイントをご紹介いたします。


一〇五度 (あすなろ書房)
著者:佐藤まどか・著
255ページ
本体価格:1,400円
ISBN978-4-7515-2873-0

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『一〇五度』簡単あらすじとオススメ度
『一〇五度』のあらすじ(ネタバレ)
『一〇五度』の読書感想文の例文2作品と書き方ポイント

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『一〇五度』簡単あらすじとオススメ度

作品概要
椅子デザイナーをめざす少年の、爽やかな青春小説。
都内の中高一貫校に編入した真(しん)は、中学3年生。
スラックスをはいた女子梨々(りり)と出会い、極秘で「全国学生チェアデザインコンペ」に挑戦することに。
中学生としては前代未聞の、この勝負の行方は・・・・・・?
父との確執や、「チームを組む」ことのむずかしさなど、立ちはだかる大きな壁に迷いながらも、
自分の進むべき道を見出そうとする少年の姿に、胸があつくなります。
モノづくりの心とともに、夢と理想だけでは生きていけないクリエイターのシビアな現実もきちんと描かれているのは、
プロダクトデザイナーとしても活躍中の著者ならでは!
15歳を目前に、大人の階段を一段のぼろうとする少年を、時に叱り、時にあたたかく見守る祖父や、
まわりの大人たちのサポートも光ります。
進路について考えはじめる中高生におすすめのYA小説。

内容(「BOOK」データベースより)
都内の中高一貫校に、編入した真は中学3年生。スラックスをはいた女子梨々と出会い、極秘で「全国学生チェアデザインコンペ」に挑戦することに…!中学生としては前代未聞の、この勝負の行方は?椅子デザイナーをめざす少年の、熱い夏の物語。

読みやすさ★★★★☆
感想文の書きやすさ★★★☆☆
面白さ★★☆☆☆

こんな人におすすめ
・小説を読みなれていない人
・将来のやりたい事や夢が決まっている
・優等生である
・比較的裕福な家庭の子

『一〇五度』はリッパな中学生のリッパな悩み

『一〇五度』は裕福でエリート中学生の真が、同じ学校のイスメーカーの変わり者の令嬢、梨々と2人椅子のデザインコンペにチャレンジする物語。学業やコンペに全力投球しながら、父親との確執とも戦う。でも「負けないぜ!」と将来の椅子デザイナーへの道をあきらめない…というお話です。

255ページで文字フォントサイズも大きく、行間も広めな装丁の本ですので、本を読みなれている人ならすぐ読める内容です。
物語としては前半に深みがなく、その展開が小中学生が読むジュニア文庫にありがちで「これはAIが書いたのか?それとも中学生向け小説自動作成フォーマットにキーワード入れたらできたのか?」と感じられるほど、読書慣れしていない中学生向けと言う印象です。

父親がクリエイティブ系の仕事に就くことにやたら反対して教える「デザイナーの現実」を知ることで真も「椅子デザイナー」は修羅の道であることを理解する。
「オレはこの道でしか生きられないかどうか?・・・行くべくしていく道なのか?」ダケドやっぱりイスが好き!…そして人生の荒波に立ち向かいそうなオレで物語は終わります。

主人公は編入で難関の中高一貫校に入れる頭脳と高身長な恵体で明確な人生の目標・志しがあり、それに邁進する姿勢は普通の公立中学校に通う子からしたら「THEリッパな中学生」です。
本書での読書感想文を書くかどうかは「この設定と主人公に共感できる」人からおすすめします。なぜなら設定がすでに齢15の格差社会であり、学力不足や貧困家庭の子供にしたら腹立たしく、勝ち組の真の「贅沢な悩み」と「将来への職業への不安感」を感じるかもしれないからです。
「クリエイター業界の憂鬱」は知ることが出来ますが、そちら方面に行きたい子は本作より感じた不安を払しょくし、希望を持ちなおせるような、エンディングは用意されていません。

とはいうモノの、たいしたヒネリのある内容の物語でもないので、本書で問題提起されているポイントを押さえて、その辺を読書感想文内で論じれば書き上げることが出来ると思います。

≪本書で問題提起されているポイント≫
①自分でも知らぬ間に抱いている偏見
②価値観をおしつける父親に刃向かえない弱さ
③人は支え合って生きていることの無自覚と「一〇五度」の姿勢

 
これらを読書感想文の主体のテーマにして感想を書き、+αで「自分の夢に向かって~をしている」などもあれば形にはなります。
 

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『一〇五度』のあらすじ(ネタバレ)

プロローグ
主人公が自分がデザインしたイスがNY近代美術館のエントランスで使用されている。誇らしい気分で座ると同じ椅子に座っている人も一緒に、椅子の脚が壊れてひっくり返った。・・・という夢を見た。

1 編入性
大木戸真は競争率18倍の中高一貫の中3の新学期に編入。じいちゃんがイス職人だった影響で自己紹介でうっかり「好きな事はイス」と答え変わり者と思われる。後ろの席のカトシュンとは少し仲良くなった。

2 イス男
転校したのは、ばあちゃんが死んで、左半身不随のじいちゃんと同居のため。だが都立工科大学付属の中高一貫校なら大学推薦入学もできちょうどよかった。友達がまだできないので図書館に行き、イスの本を楽しんでいたら後ろからスラックスをはいた女子にイチャモンをつけられた。カトシュンに聞くと「女子のクセにスラックスをはいているスラックス早川(スラカワ)」と教えられた。イスにくわしいのが気になった。

3スラカワ
図書館で借りたかったイスの本は貸し出し中になってた。借りたのはスラカワ。イス論議に花が咲き意気投合。彼女は早川梨々で実家はイスメーカーだった。

4 女子にスラックス、男子にスカート
早川と下校しカトシュンにはからかわれたが早川は男同士のようで緊張しない相手。真はイジメ回避で当たり障りなくがモットーなので早川のスラックスをはく自由な考えに感心した。真に自分を梨々と呼ぶように言い、将来はモデラーになりたいが家族に女だから経営に回れと言われ、高校や大学はお嬢様校に行けと言われている。真も同じ状況でお互いイスの話ができる人がいないと話し、2人で『全国学生チェアデザインコンペ』に参加することにした。

5 伝説のモデラー
梨々が真の家に遊びに来て、じいちゃんに梨々の家がセーディア社(イスメーカー)であることを話し、じいちゃんもモデラーだった紹介すると、梨々曰くじいちゃんは伝説のモデラーで梨々の祖父で現役の早川宗二朗さんのライバルだったとリスペクトされじいちゃんは涙ぐむ。
梨々がモデラーじゃなく経営に行けと言われ、真も父親にk大から一流企業勤めを強いられてる。親は子供の気持ちを尊重しないと話すと、じいちゃんはイス屋が時間も収入も不安定な仕事だからそういう気持もわかるという。しかもk大進学を進めるのは父親が学費を考え国立Y大にしたが、就職するとk大が有利だから勧めているという。

6 極秘プロジェクト、発進!
2人は学校帰りに真の家で2時間プロジェクトを進める。2人はお互い家族にコンペ参加がバレたらマズい。
コンペのテーマ「家でくつろぐイス」か「家で仕事や勉強するイス」の2つあるが真はどっちもイケるイスが理想という。梨々の言う男女でイスの需要が違うことなど話し合い、テストが近いからミーティングはしばらく延期

7 オヤジ対策
オヤジに文句を言わせない為にテスト勉強に集中する。健康な真は病弱な弟と比較され、良い成績を取ることは当然とされ、我慢を強いられてるので、唯一のやりたいイスに専念するため嫌いな勉強をする。
だが勉強し過ぎてクラス1番になり、ここから成績が下がる事をオヤジが許さないので後悔した。
オヤジは良い成績を見て進学校受験を勧め「美術やデザイン以外のまともな路線に行け」と言われケンカする。エリート志向のオヤジよりひょうひょうとした元職人のじいちゃんのほうが上手な気がする。

8 最強のパートナー
真はデザインをいくつか提案するが、素材や技術、製作時間、予算などの知識が及ばず、梨々にダメ出しされる。梨々は制作プロセスも計算でき、イス作りのレベルの差を思い知らされる。梨々はイスのアイデアは浮かばないから出来ない事を補い合うのがチームという。成績は下位でもモデラーの素質や基礎がある梨々が、良い成績を取ることでしかオヤジから解放されない自分を思うと比べてうらやましかった。

9 一〇五度
テーマやデザインの要点を話し合っているうちに、2人は熱くなり「デザイナーが上で、モデラーが下みたいな言い方じゃん」と真にキレて梨々は帰ってしまう。じいちゃんに「仕事はフィフティ・フィフティだ…人間関係もイスの背もたれ同様一〇五度が良い角度だ。思い切り寄り掛かると相手が支えきれない、ちょいと寄り掛かる程度がいいんだ」と言われ、真は梨々に思い切り寄り掛かっていたことに気づき、オヤジそっくりだと梨々の家まで謝りに行く。
梨々の会社を見学し、モデラーとデザイナーが同じ目的に向かい、突き進む熱気を見て、自分が恥ずかしくなり、真が梨々に何か寄り掛かってもらわないと一〇五度の関係が成り立たないと思い、勉強を教えることになった。

10 反抗心と好奇心
イスのスケッチをオヤジに見られ「なぜわざわざあぶない橋を渡りたがるんだ?…将来(進路)方向を変えればいずれ必ず(父親に)感謝するはずだ」と叱られ、初めてオヤジと真正面からぶつかる。かあさんは「親の保護下にいる限りいう事を聞くモノ。でもとうさんモノづくりの道が険しいのを知っているから反対している、進路はゆっくり決めて、真は成績を下げない、父さんは追い詰めないで」と仲裁。
オヤジは「高校時代のデザインの仕事をしている友人達から話を聞いてこい」とセッティングされた。じいちゃんは「おまえは人生の分岐点にさえたどり着いてない。14歳でそんなに悩むことない」という。好きでも努力しても職業にして暮らすのはできないのだろうかと思う。

11 デザイン業界
一人目の「スタジオ・デラダ」の寺田さんは厳しいデザイナー業界の話をした。
大手にデザイナーで就職すると管理職になれても美大出は会社役員にはなれない。個人事務所ならほぼバイトか契約社員の図面や模型作りの作業員となり、新しいソフトを使いこなせないと契約を切られる能力主義。デザイン単価も下がり、経費も掛かるので仕事は断らないし営業も忙しい。屈辱的な仕事や依頼主の好み、流通、予算、期限、製造方法などがんじがらめの条件から「問題を解決するのがデザイナー」と現実を聞かされて真は言葉に詰まる。
だが寺田さんは「デザインオタクのガキだったので、来るべくしてきた道」でもデザインを続けている同級生は半分もいなく、成功するかは運、才能、タイミング、人とのつながりなどいろんな要素が左右する。成功しても競争世界で売れなきゃ意味がない。コピーされた安物が売れるのはよくある話。それでもやめないのは「離婚して再婚して新しい奥さんに会えなくても、デザインをやめられない病気を治す気がないから」という。
厳しい現実を教わりながらも、寺田さんは「建築を学んだら?」とアドバイスされあきらめるどころか確信し始めていた。

12 クリエイターの知られざる人生
次の吉野さんはオヤジの事を「カッコいい男だった」と褒めて不思議に思う真。
吉野さんは大手広告代理店でアートディレクターをしていたが、3年前に倒産し解雇された。また再就職も厳しく50以上面接を受けてやっと社内報を作る仕事につき、運がいいと言う。
真は広告に未練はないのか?聞くと「今与えられた仕事の中で、能力を最大限生かしていたら、評価されて広告を広告代理店に仕事を出す立場になったし、忙しすぎないから家族は喜んでいる」と言う。
 お父さんが反対するのは、高校時代一番優れた城谷の為と言い、家が貧乏で国立芸大しか受験できず、でも芸大に受かる絵じゃなくて、独学で肉体労働しながら公募展に挑戦。毎回ダメで酒におぼれるようになり24歳で変死した事にあると言い、吉野さんは「クリエイターの世界は才能があっても成功できないケースなんていくらでもある。」「あこがれだけならよく考えた方がいい。本気なら高2くらいから美大予備校で勉強したほうがいい」と最後言われた「無限の選択肢」という言葉にデザイン以外になんの選択肢があるのか考えた事がなかった。
家に帰り、素直にオヤジに「すごく参考になった、サンキュ」と言えて、オヤジが真の将来を本気で心配しているのもよくわかった。オヤジは「好きな事を仕事にしたら逃げ場がなくなる」と言うが真が「進路はよく考えてから決める…今はイスのデザインをしたい」と一応納得してくれた。

13 強いやつの弱い心
力と二人きりになり日頃の腹いせに言いたいことを言おうと思った。
勉強を頑張るように言っても「(体が弱くて)がんばれないもん」といい、親が死んだら兄ちゃんに頼ると言う。真は「今は将来やりたいことの為に、夢を実現させるために勉強している」というと「お兄ちゃんはわかっていない」「夢なんてないよ。やりたい事が出来たためしない。来週の事もわからない。自分の体を信用できない。夢を持てるはずもなく、そういうのわかんないでしょ?」と言う。真は逆に「おまえは強いやつが逃げるのが許されない苦しさをわかっていない」と言い、力に勉強を教えることにした。力は真を怖がっていて、自分とオヤジの関係だと気づいた。そして真が力を嫌っていた事もバレていた。お互い相手の気持がわかったのでやきもちをやくのをやめた。

14 イスの小宇宙
毎日1時間力の勉強を教えるうちに、小2からつまづいている事がわかり希望が見えてきた。
じいちゃんからはコンペ参加のことやプロを目指すにしても、私立の美大は金がかかる事やオヤジを説得できるのかとため息をついた。力は高い私立中学に行かせるらしいので、真は国立の芸大の建築科もかんがえていると話すとじいちゃんも納得した。イスの「座り心地がいいってのは一筋縄じゃいかない」と言い、その人の体格、長居させたくない店なら、座り心地の悪いイス。イスの中のウレタンの固さを場所で変えたりと見えない部分で工夫される小宇宙だと教わる。

15 フリースタイル
梨々の部屋でプロジェクトを進め、決定版と思えるデザイン「フリースタイル」という自由な使い方ができるイスを見せた。梨々も気に入ったが、5分の1模型を作ってから問題点が見つかることもあり、6月のテスト週間や力や梨々の勉強を手伝わなければないのでとにかく時間がなかった。模型を作ると「まともになりすぎる」仕上がり。人体模型を座らせてみると、自分サイズで考えてデザインしていたことに気づき、デザインのアレンジを思いついた。

16 原寸模型
原寸模型に取り掛かる。完成した原寸模型に座ると何となく不安定な感じなど細かいところを作り直し、イスが完成したのは7月の頭だった。途中中間テストや2人の勉強を見た。力も梨々も成績も上がり、真は成績が下がった。オヤジに怒られたが、コンペのプレゼンパネル作成もあり、忙しくて気にならなかった。

17 全国学生チェアデザインコンペ
コンペの予選を無事通過し、大喜びした。7月最後の土曜日結果発表と表彰式。母さんがオヤジに適当な事を言ってオヤジ以外家族で会場に来れた。
斬新なイスや、ロボットみたいなアイデアのイス。真たちのイスは「中学生にしちゃ、すごい」と言われる。真を圧倒した繊細なラインで細部まで気を抜かずに計算されたイスはTK大学建築学科の生徒のものだった。
真たちは審査員特別賞を受賞し、佳作はロボットイス、優秀賞はTKの建築学科のイスだった。
表彰式後、真はTK大学で建築をを勉強したいとはっきり進路の答えが出たところにオヤジがコンペをかぎつけて会場に現れた。やはりコンペのせいで成績が落ちたのか?と聞き、力がかばおうとするが真は「いいかげんにしてくれ、ぼくにとっては大事なことなんだ」と反抗した。オヤジは「忠告を聞けないなら、将来は飢え死にする覚悟でやれ。途中で放り投げても助けてやるつもりはないぞ」と言い放った。じいちゃんは「あいつの言う事にも一理あるしな、親の反対ぐらいでやめるなら、最初からクリエイターなんかなるもんじゃないよ、よく考えな」と母さんたちと帰っていった。真はうまくいかないかもしれないし、放り投げたくなるかもしれない、オヤジにソレ見た事か、と言われるかもしれないけど、これがぼくの行くべくしていく道なんだと思った。

  

『一〇五度』の読書感想文の例文2作品と書き方ポイント


 
用紙・字数のルール その他の詳細
原稿用紙を使用し、縦書きで自筆してください。原稿用紙の大きさ、字詰に規定はありません。
文字数については下記のとおりです。

中学校の部 本文2,000字以内

※句読点はそれぞれ1字に数えます。改行のための空白か所は字数として数えます。
※題名、学校名、氏名は字数に数えません。

読書感想文のポイントと書き方事例は下記のポイントを加味して書かれています。

≪本書で問題提起されているポイント≫
①自分でも知らぬ間に抱いている偏見
②価値観をおしつける父親に刃向かえない弱さ
③人は支え合って生きていることの無自覚と「一〇五度」の姿勢

 

『一〇五度』の読書感想文の書き方の事例1…2052文字

「将来何になりたい?」と会話する事はなかなか気恥ずかしさがあります。夢は非現実的で叶いそうにもないような気がするし、バカにされそうで怖いことや、自信のなさもあるからです。ですが本書を読んで思ったのは夢も「一〇五度」ぐらい人に甘えたら実現化するのではないか?と思えた事です。

 真はイスのデザイナーを目指してコソコソ努力する成績優秀な中学3年生。父親は真に将来は一流企業もしくは官僚になるよう威圧的に鼓舞します。更に特にクリエイティブ系の仕事は否定もするのですが、イス職人だった祖父の影響で椅子のデザイナーになることを夢見てしまい、とうとう隠し切れずに衝突するのです。

ここまで聞けば「子供の夢や希望を奪う悪い父親」と思えるものの、その激しい反対には理由がありました。
父親の高校時代の3人の友人。一人はデザインで成功独立したが、嫌な仕事も受け、契約社員の雇用しかできず、デザイン料の単価は下がる一方で常に自転車操業。プライベートは犠牲にしても「デザインをやめられない病気」と言ったり、二人目は大手広告代理店の倒産で失業。やっと潜り込めた会社でデザインから離れた広報になり実力も生かせず、待遇も悪くなった現状。それでも「忙しすぎないから家族は喜んでいる」という。そして三人目は誰より才能があっても経済的事情で進学を断念し自力で公募展入選を目指すも上手く行かず、酒におぼれて24歳で変死…など、世知辛いクリエイターの現実を知っていたからです。
センスや才能、努力だけじゃなく運やタイミング、人とつながりなどいろんな要素が左右してデザイナーになれたとしても、デザインという仕事自体が苦難の多い仕事。と現実を突きつけられた真はそれでも自分が「そうとしか生きられない」かどうか自問する。が、コンペに出品するイスの制作での達成感や自分の実力を知り、改めてイスに向き合いたいと思うのです。

真の父親は暴力を振るってでも全力で豊かになれるであろう進路を進めます。DVとも言える過干渉は父親の持つ無念が根源なのです。
伝説のモデラーの息子である父親は祖父の仕事の犠牲になり育ちました。
家族の幸せより自分の仕事の喜びを追及し、経済的理由から父が選んだ大学学位により現在も会社で辛酸を舐めることがあります。学力はあったのに経済力不足の諦めが人生に影響する。息子には祖父のようになって欲しくない、自分のような思いを息子の家族にさせたくないと思うのは至極当然なものと言えます。
真にはまだ彼の夢が、彼の幸せを半減させる可能性を想像できていません。真からすると父親だって忙しくて家にいない事も多いと不満をもらすが、父親にしたら息子とぶつかりながらもコミュニケーションを取れ、病弱な次男に安泰な進路与えられる経済的余裕はやはりサラリーマン人生の選択に肯定感を感じるから、激しく進路を規制すると思うのです。
親の思う幸せと子供の思う幸せはそもそも、家族単位と個人の幸せの違いになるので意見が合致しないのは無理もないのです。

 コンペ会場に怒鳴りこんで来た父親に真は自分の夢を否定するなと反抗します。私は2人が分かり合えないのは似た者親子だからだと確信しました。
それは真が「デザイナーの方がモデラーより上」「力に感じさせていた恐怖心」などの無意識の傲慢さや自分の信念を曲げられないのは、親子で「ひとりで立つ(九〇度)つもり」でいるからだと思い、それは自我を通そうとするこの親子それぞれの甘えだと思うのです、
 
一〇五度の関係は親子であっても必要なのです。それは相手に少しもたれ合いながらも、お互いの気持ちを尊重でき、より楽により良く立つことができる関係だからです。真は夢を叶えるために、父親という人の生き方も受け入れるところから始めた方がいいと思います。父に尊厳を感じていないから男同士の関係になれないのです。
じいちゃんは「親に反対されたくらいであきらめるなら夢は叶わない」と言いますが、私は「親も説得できないなら、将来他人にプレゼンテーションなんてできるわけない」と思うのです。
なぜ自分がイスのデザインをしたいのか?何に魅了されてイスに夢中になっているのか?ますはそこからです。その魅力を相談と言う形で父に伝えるには、真にはじいちゃんのような「しなやかさ」が必要ですが、真がこの先しなやかさを身につけるのかどうかは本書では見えてきませんでした。

物語はまだまだ夢半ばでイス作りへの夢が固まりながらも厳しい未来を感じさせ終わります。
人生は自己責任です。仕事については一生悩むのかもしれません。夢が実現しても「思ったのと違う」と失望するのかもしれません。中学生くらいになると恥ずかしがらずに人に語ることも必要だと思いました。それは夢を現実化させるためには覚悟が必要なのだわかったからです。そしてどんな仕事や立場にいても努力、運やタイミング、人とつながりなどいろんな要素の中には「ちょっと人に寄り掛かる」一〇五度の姿勢も何かを引き寄せるのではないかとも思いました。

その他の『一〇五度』の2000文字対応の感想文の例はこちら。
『一〇五度』読書感想文の書き方の例文【3作品】
 

『一〇五度』の読書感想文の書き方の事例2(要点を400文字で)

将来のために努力している中学生はどれだけいるだろう。その努力は、本当に自分がやりたいことを実現するためのものだろうか。いや、やりたいことが見つかっただけでも幸運と言えるのではないか。
主人公の中学三年生大木戸真は、イスのデザイナーになりたいという夢がある幸運な若者だ。しかし、父親には一流大学を出て会社員になれと言われる。親に甘やかされている病弱な弟への嫉妬もある。それでも、編入した都内の中高一貴校で早川梨々と出会い、「全国学生チェアデザインコンペ」への参加を決める。
題名の「一〇五度」は、真がデザインしたイスの背もたれの角度。真が、チームで取り組むことの難しさに直面したとき、真の祖父が助言してくれるのだ。相手に「軽く寄りかかるのにいいあんばい」の角度だと。
かなえたい夢、支え合う友、物づくりへの情熱、励ましたり厳しい現実を突きつけたりしながら子どもの成長を願う家族も描かれていて一気に読める
  
一般的な『一〇五度』の感想
 
・ここで終わるの!?というところで終わり。「父親の言うことも正論」っていう意見に素直に頷けない…頷きたくない(?)というむしゃくしゃした気持ちを抱いてしまった…。ものづくりの道を進むということについてキラキラしてない現実的な面を教えてくれるので、そういう道へ進みたい世代にもぴったりだなあと思いました。楽しいだけじゃ生きていけないのは当たり前だけど、好きなことをやって今を生きて、そうやって将来も食っていきたい自分のことを応援してほしいなとは思います…特に一番身近な親には。綺麗事なのかなあ。
・中高一貫校に編入した中学3年生の大木戸真は、早川梨々と意気投合し「全国学生チェアデザインコンペ」に挑戦することに。椅子の一〇五度は軽く寄りかかるのにいい角度だ、人間関係もそうだぞ、というじいちゃんの言葉が胸に響き、父との確執もあったが、周りの大人のサポートが夢を応援するだけじゃなく厳しい現実もあるのだということも教えてくれる。これから踏み出す一歩を応援してくれる本。
・椅子デザイナーを夢見る真は、転校を機に椅子のモデラーになりたい梨々と出会う。二人は中学生でも参加可能な学生コンペに応募する・・・という王道展開なのだが、実は将来について立ち止まって考える作りになっている。夢があるのは素晴らしいけれど、クリエイターとなって食べていけることが出来るのか? 父親が叩きつけてくる正論はまってくもってその通りで、明るく楽しいだけでは終わらないラストに好感をもった。椅子がどんな風に作られていくのかも分かって面白かった。

読書感想文で「高得点」を得るためのポイントはこちらのページに書かれています!ダウンロードできる「そのまま使えるテンプレート」やダウンロードできる「構成のサンプル」もありますので是非活用してください。

読書感想文の書き方のコツ【中学生・高校生】図解

 

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『太陽と月の大地』あらすじ(ネタバレ)と読書感想文の書き方例文

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